輸出制限を強化し安全保障を優先
中国は10月9日、希少金属レアアースおよび関連分野の技術について、輸出管理をさらに強化すると明らかにした。商務省は声明で、軍事転用の恐れを排除し国家安全を確保するための措置だと説明。新制度では、レアアース資源だけでなく、採掘・精錬・磁石製造に関する技術を国外に提供する場合、政府の許可取得が義務付けられる。
軍事利用への懸念と個別審査制度
新制度では、軍事目的での利用が疑われる案件については原則として許可を出さない方針が明示された。半導体研究や人工知能分野で使用される一部レアアースについては、個別審査を行う仕組みを導入する。これにより、最先端分野での軍事転用防止を徹底する構えだ。
世界供給の7割を握る中国の影響力
中国は世界のレアアース供給の約70%を占めており、同資源の採掘・加工・精製を一手に担う。レアアースは電気自動車、風力発電、半導体、ミサイル誘導装置など幅広い用途を持ち、グローバル産業の根幹を支える。今回の規制強化は、各国の供給網に大きな影響を与える可能性がある。
米中関係への影響と外交的思惑
この発表は、トランプ米大統領と習近平国家主席の首脳会談を数週間後に控えたタイミングで行われた。中国がレアアース政策を通じて、米国に対する外交的圧力を強める狙いがあるとの見方が広がっている。中国はこれまでも貿易摩擦下で資源分野の主導権を交渉材料として活用してきた。
国際市場の不安定化と今後の焦点
レアアース市場はすでに供給リスクを織り込みつつあり、国際価格の変動が続いている。米国や日本、欧州各国は、代替調達先の確保やリサイクル技術の強化を急ぐ見通しだ。今後は、中国の規制運用の具体的な内容と、各国の対応策が世界経済の新たな焦点となる。
