熊本での新拠点計画が前倒しで進行
台湾の半導体受託生産大手 TSMC(台湾積体電路製造) は、熊本県菊陽町に建設を予定していた第2工場がすでに着工済みであることを明らかにした。当初は「年内着工予定」としていたが、2025年10月16日に行われた決算発表会で、計画より早い段階で工事が始まっていると説明した。建設後の稼働時期については「顧客の需要や市場の状況を見極めながら判断する」としている。
半導体需要の高まりで売上・利益ともに記録的水準に到達
同社が発表した2025年7〜9月期の連結決算によると、売上高は9,899億台湾ドル(約4兆9,000億円)と前年同期比30.3%増、純利益は4,523億台湾ドル(約2兆2,000億円)で39.1%増となり、いずれも四半期として過去最高を更新した。半導体市場では生成AI向けチップの需要が急拡大しており、それが業績を大きく押し上げた。経営陣は「AI市場は引き続き力強く成長を続けている」との見方を示している。
AI関連需要が業績の追い風に
TSMCは世界の主要テクノロジー企業に最先端の製造プロセスを提供し、特にAI用途向け半導体の供給能力で高い評価を得ている。生成AIやクラウド運用の拡大を背景に、データセンター向けの高性能チップ需要が急増しており、この分野での受注が同社の利益率を押し上げる要因となった。世界的なサプライチェーン再編の中で、TSMCの投資戦略が確実に成果を上げている。
熊本第1工場の量産が順調に進む
同社は2024年12月に熊本第1工場の量産を開始しており、生産体制は順調に推移している。幹部は「国や自治体の強力な支援のおかげでスムーズに立ち上げが進んでいる」と述べ、地方との連携を評価した。第1工場では自動車用や産業用の半導体も製造しており、国内供給網の強化につながっている。第2工場はこれを補完する役割を担う見通しで、将来的には高性能製品の生産拠点としての位置づけが期待される。
地域産業と国際競争力の強化へ
今回の第2工場着工は、日本における半導体製造の再構築を象徴する動きとなる。政府の補助制度や地域支援により、熊本が新たな技術集積地として注目される中、TSMCの拡張は地元経済の活性化にも寄与する見込みだ。AI需要の拡大を背景に、同社の日本戦略は今後も重要な転換点となりそうだ。
