増産政策に現場の戸惑いが広がる
鈴木憲和農林水産相は23日、報道各社のインタビューで、石破政権が掲げたコメ増産方針について「生産現場が大きな混乱に直面している」との認識を示した。
生産者の間では、今年の好天による豊作を受け「来年は供給過剰による米価下落が起きるのではないか」との懸念が強まっている。政府はこれまで「価格抑制」を目的に備蓄米を放出してきたが、その政策が市場に与える影響が指摘されている。
「需要に応じた生産」を基本方針に転換
鈴木氏は、需給バランスを崩すような生産拡大は避けるべきだと述べ、「需要を基準にした農政運営が不可欠」と強調した。
「需要を短期間で増やすのは難しく、来年は大幅な増産にはならない」と説明し、拡大一辺倒の政策を見直す方向性を明確にした。一方で、海外需要の開拓を通じて「中長期的には増産体制を整える可能性もある」と述べ、輸出戦略に軸足を置く姿勢を示した。
コメ価格への政府関与を否定
新政権の経済政策では食料品価格の安定が課題となっているが、鈴木氏は「コメ価格は市場で決まるもので、政府が関与すべきではない」と明言した。
これは、前任の小泉進次郎前農相が主張した「コメは高すぎる」との発言と明確に異なる立場であり、石破茂前首相が示した「5キロあたり3,000円台が望ましい」との目安とも距離を置く発言となった。
小泉氏主導の「コメ対策チーム」も年内に解散
政府は「令和の米騒動」と呼ばれた昨年の混乱を受け、備蓄米を随意契約で市場に放出してきた。これを主導した小泉氏の「コメ対策チーム」について、鈴木氏は「役割を終えた」として年内に解散する方針を明らかにした。これにより、価格抑制中心の政策から、市場原理を重視する体制への移行が進むとみられる。
消費者支援策の検討と今後の展望
一方で、鈴木氏は物価高への対応として「おこめ券」などの消費者向け支援策を検討する考えを示した。農家保護と消費者支援の両立を課題としつつ、「現場感覚を重視した農政」を掲げている。
政府内では、輸出強化や需給調整の仕組みづくりを通じて、長期的な安定供給を目指す方向で調整が続く見通しだ。
