経済安全保障と成長の両立を掲げる新方針
高市早苗首相は11月4日、全閣僚が出席する「日本成長戦略本部」の初会合を開催し、経済の再生と安全保障強化を両立させる新たな戦略の方向性を示した。政府はAIや造船、防衛、エネルギー、半導体など17分野を重点支援とし、民間投資を促す制度を整備する。首相は「供給力を抜本的に強化し、危機に備える経済基盤をつくる」と強調した。
「日本成長戦略会議」で官民連携を制度化
この方針のもと、政府は「日本成長戦略会議」を新設した。高市首相と経済政策を共有する有識者が参加し、官民が一体となって投資促進策を議論する。重点分野ごとに担当閣僚を置き、政策の一貫性を確保する体制を採る。政府はこれまでの経済対策に見られた「バラマキ型」を脱し、構造的な成長力強化を目指すとしている。
17分野に広がる投資対象と支援策の焦点
投資対象には、AI・半導体の技術革新、造船産業の再建、防衛関連の国内生産力強化のほか、航空宇宙や核融合技術などの新領域も含まれる。また、アニメやゲーム産業などのコンテンツ分野も「日本独自の競争力を持つ資産」として支援対象となる。これらは単なる成長産業ではなく、危機対応力を高める国家戦略の一部と位置づけられている。
歴代政権の政策を継承しつつ課題を再定義
過去の政権も同様に成長戦略を掲げたが、持続的な経済拡大にはつながらなかった。高市首相は安倍晋三元首相のアベノミクスの投資促進策や、岸田文雄元首相の「新しい資本主義」の分配重視政策を引き継ぎつつ、これらを融合する形で政策を再構築している。政府は「税率を上げずに税収を増やす」との方針を掲げ、企業収益と所得の底上げを通じて財政健全化を図る。
経済基盤の強化と実効性が問われる局面
今回の戦略が成果を上げるかどうかは、実施段階の政策連携にかかっている。専門家は「過去の成長戦略が効果を上げなかった要因を分析し、構造的な障害を取り除けるかが鍵」とみる。急速な物価上昇や実質賃金の伸び悩みが続く中、高市政権が打ち出す新方針は、経済の持続力を左右する試金石となりそうだ。
