物価リスクへの警戒姿勢を明確化
日本銀行の植田和男総裁は6月3日、共同通信きさらぎ会で講演し、物価上振れリスクへの警戒を強める姿勢を示した。中東情勢を巡る不透明感が続く中でも、物価上昇が経済や金融市場に与える影響を重視する考えを明らかにした。総裁は、経済の下振れリスクよりも物価上振れリスクが高まると判断される場合、利上げの是非を十分に議論する必要があると述べた。
原油高が基調的物価に波及
植田総裁は、原油価格の上昇を起点とする物価上昇が、基調的な物価動向に影響を及ぼす可能性に言及した。現在の日本では、企業の賃金や価格の設定姿勢が以前より積極化しているとの認識を示した。特に、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後の資源価格高騰時と比べ、企業が価格転嫁を進める動きが明確になっていると説明した。
価格転嫁の速まりに注意示す
総裁は、これまで得られたデータや企業へのヒアリングを踏まえ、物価上振れリスクがより大きく、より早く現れる可能性が高いと指摘した。実際の物価上昇が人々の予想物価上昇率を押し上げれば、基調的な物価上昇率が2%の物価安定目標を超えて高まる恐れがある。日銀は、こうした二次的な波及が定着しないかを特に注意して見る必要があるとの立場を示した。
対応遅れによる市場負荷を懸念
植田総裁は、物価上振れへの対応が遅れれば、後に大幅な利上げを迫られる事態につながると述べた。その場合、景気だけでなく、金融市場や金融システムにも大きな負荷がかかる恐れがあると説明した。長期金利の上昇にはインフレ予想の上振れも関係しており、適切な金融政策によって物価が管理されるとの市場の信認を確保する重要性を強調した。
6月会合で政策判断が焦点化
日銀は6月15、16日に金融政策決定会合を開く。市場では、植田総裁の発言を受け、6月会合で利上げが議論されるとの見方が強まった。現行の政策金利は0.75%程度で、引き上げれば1%台に到達する見通しである。利上げとなれば昨年12月以来、4会合ぶりとなる。日銀は中東情勢の影響を見極めながら、物価安定目標の持続的な実現に向けた政策運営を判断する。
