比当局が画像公開し中国を非難
フィリピン沿岸警備隊などは6月10日、南シナ海のスカボロー礁で浮遊式の設備を確認したとして、画像を公表した。スカボロー礁は中国も領有権を主張しており、中国名では黄岩島と呼ばれる。フィリピン側は、同国の承認を得ずに設置されたものだとして、中国を非難した。
この設備は5月25日に初めて見つかった。海上に浮く長方形の構造で、面積は約30平方メートルとされる。画像では複数人が乗っており、中央部分には通信や観測に使われるようなアンテナ状の装置が確認された。
調査船2隻の行動が判断材料に
沿岸警備隊は、設備が確認される直前に中国の調査船2隻が周辺で活動していたことを重視している。そのため、同隊はこの浮遊設備を中国のものと断定した。別の説明では、中国の調査船によって設置された可能性が高いとされている。
フィリピン政府は6月9日、この設備をめぐって中国に外交上の抗議を行った。10日には、中国政府に撤去を求めていることも明らかにした。フィリピン側は、設備の目的について明確な結論を示していないが、沿岸警備隊の報道官は海洋環境に関するデータ収集用との見方を示した。
設置目的は不明も警戒感広がる
フィリピン当局者は、構造物の用途や、中国による緊張を高める行為とみなすかどうかについて、推測を避けた。一方で、安全保障上の懸念は強く示されている。フィリピン海軍の報道官は、スカボロー礁が新たな人工島として開発されることを防がなければならないと述べた。
公開された画像では、木の板でつくられたような中央デッキの周囲に、円筒形の浮体が固定されている。移動できる形式のプラットフォームとされ、現段階では恒久的な施設とは説明されていない。しかし、フィリピン側は小規模な設備が将来の拠点整備につながることを懸念している。
自然保護区承認で既成事実化を警戒
中国は2025年9月、スカボロー礁に国家級自然保護区を設立することを承認したと発表した。フィリピン側は、この発表を中国が同礁への支配を事実上固める動きと受け止めている。今回の浮遊設備の確認は、その警戒感をさらに強める要因となっている。
海洋法の専門家であるフィリピン大学のジェイ・バトンバカル氏は、南シナ海で中国が整備したミスチーフ礁の事例に言及した。ミスチーフ礁は中国が人工島化した7つの拠点の一つで、滑走路やレーダーシステム、地対空ミサイルが置かれている。同氏は、中国が小さな設備から始めて段階的に施設を増やしていった経緯を指摘した。
撤去要求で対立の焦点鮮明に
フィリピンは、中国側に浮遊設備の撤去を求めることで、スカボロー礁の現状変更を認めない立場を明確にした。無許可の設置は違法だとする主張は、領有権争いが続く海域での中国の行動に対する強い警告でもある。フィリピン側は、人工島化につながる動きを防ぐ必要があると強調している。
中国側の設置意図は明らかになっていないが、フィリピンにとっては安全保障と海洋権益に関わる問題となっている。外交抗議と撤去要求により、スカボロー礁をめぐる対立点は一段と鮮明になった。今後は、構造物の扱いと中国の対応が南シナ海情勢の焦点となる。
