成長市場インドに広がる投資協力の新たな動き
高市早苗首相とインドのモディ首相は7月2日、ニューデリーで首脳会談を行い、経済分野を含む幅広い協力拡大で一致した。両国は、2兆円規模の投資を含む日印企業間の協力文書を発表し、官民を通じた経済関係をさらに強化する方針を示した。インドが2047年までの先進国入りを目指す中、日本側は同国の成長力を取り込み、自国の経済成長にも結び付ける考えだ。
インドは人口が14億を超え、旺盛な個人消費を背景に高い成長が続いている。日本企業はすでに1400社以上がインドに進出しており、製造業の進出先としても注目を集めている。国際協力銀行の調査では、日本の製造業にとって有望な進出先としてインドが4年連続で1位となっており、今回の首脳会談はこうした流れを後押しする機会となった。
AIや半導体で技術連携を前面に据える方針
会談後の共同記者発表で、モディ首相は経済安全保障とエネルギー安全保障の重要性を強調した。半導体や先端素材など戦略的分野で供給網を強くする方針を示し、日本からのさらなる投資と技術協力に期待を表明した。AI、半導体、重要鉱物、情報通信技術、クリーンエネルギー、医療品といった分野が、今後の日印協力の中心に置かれる。
モディ首相は、日本の精密技術とインドのソフトウエア能力を組み合わせることで、世界のAI開発に新たな勢いをもたらすと述べた。これは、日印が単なる投資関係にとどまらず、先端技術を共同で生かす関係へ移行する姿勢を示す発言となった。高市首相も、投資とイノベーション協業を通じて強い経済を実現する考えを示した。
人材交流と企業進出の具体化が進む局面へ
経済協力の拡大に加え、人的交流も重要なテーマとなっている。過去の日印首脳会談では、インドから日本への人材5万人を含め、5年間で50万人の人的交流を目指すことで一致しており、今回の会談でも協力の具体化が議論される見通しとなっていた。日本企業にとって、インドの豊富な人材は人手不足や技術者確保の面でも重要性を増している。
企業の動きも活発化している。大日本印刷は今年4月、インド工科大学ハイデラバード校に研究開発拠点を開設した。印刷技術を応用した医薬品や電気自動車関連事業の拡大を目指すとともに、日本で不足するエンジニア人材の獲得も視野に入れている。ITや介護などの分野でも、インド人材を取り込む動きが広がっている。
グローバルサウス展開へ協力拡大を確認した会談
高市首相は首脳会談後、両国の企業関係者が参加する経済フォーラムに出席した。保護主義の台頭、経済的威圧、地政学的緊張の高まりにより、地域の自律性と強じん性を高める必要があると述べた。日本とインドを地域を支える2つの民主主義国家と位置づけ、連携をさらに深める考えを示した。
また、高市首相は、インドを拠点にアフリカとの連携を進める日本企業が増えていることにも触れた。日印の新たな成長モデルを、自由で開かれたインド太平洋の構想のもとで、アフリカ、アジア、中南米などグローバルサウスの国々にも広げる考えを示した。日印協力は、2国間にとどまらず、第三国展開を含む枠組みとして扱われている。
経済協力が日印関係を押し上げる段階へ移行
今回の首脳会談は、経済協力を日印関係の中心的な推進力として位置づける内容となった。安全保障やエネルギー分野での連携と並び、投資、AI、半導体、人材交流が具体的な協力項目として示された。モディ首相が日本からの投資拡大と日本企業の進出増加に期待を示したことで、インド側の狙いも明確になった。
日本側にとっても、インドは成長市場であると同時に、技術、人材、供給網の面で重要な協力相手となっている。両首脳が発表した協力文書と共同声明は、官民連携を通じて経済関係を広げる基盤となる。日印関係は、成長分野での実務的な協力を積み上げる段階に入った。
