4万超アカウントを無断退会させた疑い浮上
アニメ配信サービス「バンダイチャンネル」を狙ったサイバー攻撃事件で、警視庁サイバー犯罪対策課は、埼玉県所沢市の15歳の男子高校生を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。少年は、運営会社が管理するサーバーに虚偽の情報を送り、4万6812件のアカウントを本人の意思と関係なく退会処理させた疑いが持たれている。
問題の行為は令和7年11月4日午後5時ごろから午後8時45分ごろまでの間に行われたとされる。運営会社は対応のため、同月6日にサービスを一時停止した。警視庁は、この一連の処理が会社の業務に支障を与えたとみている。
少年は容疑を認めている。供述では、被害企業に対する個人的な恨みはなかったと説明している。警視庁は、攻撃に至った経緯や実際の操作内容について詳しく調べている。
発見した脆弱性に自作プログラムを使用か
警視庁によると、少年は事件当時、中学3年生だった。情報処理技術は独学で身に着けたとされ、通信解析を趣味としていた。バンダイチャンネルを運営する会社のサーバーを調べる中で、サイト上の脆弱性を見つけたとみられている。
少年は、その脆弱性を利用し、退会処理を繰り返すためのプログラムを自作した疑いがある。プログラムの作成には対話型生成AI「チャットGPT」を使ったとみられ、生成AIが不正行為の補助に使われた点も捜査上の焦点となっている。
今回の事件では、高度な専門教育を受けていない未成年でも、独学の知識やAIを組み合わせることで企業システムに大きな影響を与えた点が特徴となった。警視庁は、押収したパソコンやハードディスクなどを解析し、プログラムの作成過程や使用実態を確認している。
不正アクセス容疑での逮捕後に再立件へ
この少年を巡っては、今回の偽計業務妨害容疑に先立ち、別の容疑でも逮捕されていた。警視庁は6月、他人のバンダイチャンネル利用会員のメールアドレスやアカウント残高などを閲覧したとして、不正アクセス禁止法違反の疑いで少年を逮捕していた。
その際、少年は捜査員に対し、通信解析をしていたところ、偶然会員情報が見えたと説明したという。今回の容疑については、ログインできる会員アカウントが多数あったため実行した趣旨の話をしている。
運営会社から警視庁に相談が寄せられたのは令和7年11月だった。相談を受けた同庁が捜査を進め、会員情報の閲覧と大規模な退会処理の双方について調べを進めた。処分保留となっていた不正アクセス事件に続き、業務妨害に関する容疑で再び立件された形だ。
恨み否定、趣味の通信解析が事件化した経緯
少年は、被害を受けた企業への恨みを否定している。捜査関係者への説明では、通信解析を趣味として行う中で会員情報が見えたと話している。攻撃の背景には、特定企業への報復ではなく、技術的な関心や不正に操作できる状態への安易な反応があったとみられている。
読売新聞が伝えた警視庁幹部への取材では、少年は独学でプログラミングを学び、攻撃プログラムを自作していた。押収された機器には、事件の実態解明につながる情報が残されている可能性がある。
一方で、動機の詳細はなお捜査中である。大量のアカウントを退会させる処理は、利用者と運営会社の双方に影響を及ぼす行為であり、単なる技術的な試行では済まされない。警視庁は、行為の認識や影響への理解についても確認している。
生成AI悪用防止が改めて重要課題として浮上
今回の事件は、生成AIが不正プログラムの作成に使われた疑いがある点で注目される。AIは本来、学習や業務効率化など幅広い目的で利用される技術だが、使い方によってはサイバー攻撃の補助手段になり得ることが示された。
中高生による自作プログラムの悪用事件はほかにも確認されている。生成AIの技術を悪用して携帯大手の通信回線を不正契約したとして、男子中学生が逮捕された事例も報じられている。若年層が技術を扱う機会が増える中、知識の利用先を誤れば重大な被害につながる。
警視庁幹部は、安易な気持ちで行った行為が企業に大きな損害を与え、社会的影響を生むことを忘れないでほしいと指摘している。技術習得を適切な方向に導く教育と、不正利用を防ぐ仕組みの両面が問われている。
