ブラジル当局がTikTokに下した大規模な行政処分
ブラジルの国家データ保護局(ANPD)は、動画共有サービスTikTokを展開する中国IT企業バイトダンスに対し、未成年者の個人情報を巡る管理が一般データ保護法に反したとして、約1億5380万レアルの制裁金を科した。日本円では約47億円に当たる。処分内容は8月25日付のブラジル官報で明らかになった。
当局は、TikTokが未成年者に関する情報を扱う際の確認手続きや安全対策が十分ではなかったと判断した。サービスの利用方法だけでなく、収集された情報の管理方法についても改善を求めている。バイトダンス側は、ブラジルの法制度に沿うための対応計画を進める意向を当局に示している。
未成年者の個人データ管理体制に重大な不備を指摘
ANPDが特に問題としたのは、13〜18歳の利用者に関する情報の処理だ。当局によると、バイトダンスのブラジル法人は、十分な法的根拠を確保しないまま若年層の個人情報を扱っていた。調査期間中に対象となった人数は、少なくとも800万人に及んだ可能性があるとしている。
この指摘は、TikTokの年齢確認の仕組みが利用者の実年齢を確実に判定できていなかったこととも結び付いている。未成年者が利用するサービスでは、成人と同様の方法で情報を集めるのではなく、保護者の関与を含めた手続きが求められる。当局はその運用に不足があったとみている。
保護者の同意が確認できない個人情報は削除対象に
今回の措置では、制裁金だけでなく、保存済みデータへの具体的な対応も盛り込まれた。ANPDは、登録している10代の利用者について、必要となる保護者などの同意が60日以内に確認できなければ、関連する個人情報を削除するよう命じた。
削除や報告などの命令に従わない場合には、1日につき13万7081.49レアルの追加制裁を科すとしている。一方で、バイトダンスが行政処分を争わず、速やかに支払う場合には、当初の制裁額から25%を減額できる制度も示された。
収集済みの情報についても、広告表示などに利用されていたデータの消去や管理方法の見直しが求められている。今回の判断は、未成年者の利用を制限するだけでなく、企業側が既に取得した情報をどのように扱うかにも踏み込んだ内容となった。
アカウント不要で閲覧できる仕組みにも規制上の懸念
ANPDは、ログインしていない利用者でも動画を閲覧できるTikTokの機能にも問題を提起した。この仕組みではアカウント登録が必要ないため、児童や青少年が十分な年齢確認を受けずにサービスへ接触できる状態にあるとした。
当局によると、この閲覧方式はブラジルで提供されている一方、米国や欧州では利用できず、登録した利用者を中心とする仕組みになっている。ブラジル当局は、未成年者に関する情報を大規模に扱うサービスとして、リスク低減策が不足していたとも指摘した。
アカウントの有無だけで利用者を管理することが難しい環境では、年齢を確認する方法そのものが規制上の重要な論点となる。今回の処分では、利用前の確認から利用後の情報管理まで、複数の段階が検証対象となった。
児童と青少年の保護を巡る監督体制が一段と強化へ
ブラジルでは2026年3月、インターネット上で児童や青少年を守るための新たな法律が施行された。ANPDは8月21日、この法律への対応状況を確認するため、合計22のデジタルプラットフォームやSNSを対象とする新たな監視手続きにも着手している。
TikTokを巡る未成年者保護の問題はブラジルだけに限らない。米司法省も2024年、13歳未満の利用者によるアカウント開設への対策が十分ではなかったとして法的手続きを進め、2026年8月21日にはTikTok側が4億ドルを支払うことで和解したと発表している。
今回のブラジル当局による処分は、若年層が利用するデジタルサービスに対し、年齢確認、保護者同意、情報削除、安全対策を一体として求めるものとなった。バイトダンスには制裁金への対応とともに、国内法に沿った運営体制の改善が求められている。
