中国系集団による世界規模のサイバー攻撃が判明
米マイクロソフトは10月21日、中国政府とのつながりが指摘されるハッカー集団が、人工知能(AI)を利用して世界各地の数百の企業や組織にサイバー攻撃を実行していたと発表した。攻撃は9月以降に確認されており、複数の産業分野に被害が及んでいる。
同社が「ストーム0940」と呼ぶ集団は、AIを組み込んだセキュリティー検証ツールを不正な侵入活動に転用していた。クラウドサービスに保存されたアクセス履歴などを分析した結果、広範囲にわたる攻撃の実態が明らかになった。
標的には民間企業だけでなく、政府機関や軍事関連組織も含まれる。攻撃の大部分は成功しなかったものの、一部では侵入後も継続して利用できる強力なアクセス権が取得されていた。
AIによる侵入作業の自動化で攻撃速度が大幅に上昇
今回の攻撃に使用されたのは、オープンソースの侵入テストツール「ARTEX(アルテックス)」である。本来は情報システムの安全性を調査するための技術だが、攻撃者はその自動処理機能を悪用した。
ARTEXは利用者が任意のAIモデルを組み合わせることができ、ネットワークの調査や侵入テストに必要な複数の作業を自動的に実行する仕組みを備える。設定によっては、標的の事前調査から情報の持ち出しに至る作業まで実施できる。
確認された事例では、1分間に最大2900回のログイン操作が試みられた。また、攻撃開始から3時間以内に、システムを広範囲に操作できる重要な管理権限を取得したケースもあった。大量の処理を短時間で実行する能力が、今回の攻撃の特徴となっている。
航空宇宙から金融機関まで多様な産業が標的に
攻撃対象となった業界は、航空宇宙、防衛、自動車、化学、エネルギー、金融サービスなど幅広い。さらに、半導体、製造業、ソフトウエア、メディア、法律関連の組織も標的に含まれていた。
政府機関や軍事関連組織のほか、シンクタンク、非営利団体なども攻撃を受けている。特定の業界に限定せず、多数の組織に侵入を試みる活動が展開されていた。
マイクロソフトの分析では、攻撃の多くは侵入に至らなかった。一方、一部の標的では、システム内の不正なプログラムなどを除去する作業が行われた後も、攻撃者が利用できる高い権限が維持されていた。
米IT企業への侵入と日本国内の攻撃事例が浮上
米ITサービス企業コネクトワイズへの侵入も、ストーム0940による一連の活動として確認された。同社が提供するクラウドバックアップサービスが攻撃を受け、アプリケーション接続への対応と復旧作業が進められている。
コネクトワイズは、影響を受けた接続を制限し、管理された手順に従ってサービスを段階的に再開している。ただし、顧客ごとのクラウド環境に既に不正なアクセス経路が設けられている場合、現在の対策だけでは排除できないとして、追加調査の必要性を示した。
日本国内でも、約80社を対象とした攻撃にARTEXが使われた疑いが報告されている。10月19日に公表された調査で明らかになったもので、今回特定された集団が日本での攻撃にも関与したかどうかは判明していない。
攻撃者の権限維持が示すサイバー防御上の課題
今回の事案では、AIを利用した高速な侵入活動に加え、攻撃後に確保されたアクセス権の扱いが重要な問題となった。システム上の不正な活動を停止させても、既に取得された権限が残存する事例が確認されている。
コネクトワイズの対応でも、アプリケーション接続の封じ込めと、顧客環境における不正アクセスの調査は別の作業として進められている。復旧措置だけでは、侵入による影響を完全に解消できない状況が示された。
一方、在米中国大使館は、中国政府がハッキング行為に反対し、法律に基づいて取り締まっていると説明した。サイバーセキュリティー問題を理由とした中国への非難にも反対する立場を表明している。
