利用者減と人口減少が経営を直撃
JR西日本が公表した2022~24年度平均収支によると、利用者が少ない19路線32区間すべてが赤字となり、年間の赤字総額は約267億円に達した。
対象となったのは、1キロあたりの1日平均利用者が2,000人未満の区間である。人口減少とモータリゼーションの進行により乗客数の落ち込みが続き、平均収支率は13.1%に低迷。鉄道としての経済性を維持できない実態が浮き彫りとなった。
コロナ後も回復鈍く収支改善は限定的
新型コロナウイルス流行の影響が薄れたことで一部区間では乗客が戻ったが、経営改善には至らなかった。
JR西によると、対象30区間の収支率は前回調査より0.6ポイント上昇し12.6%となったが、依然として費用の大部分を運賃収入で賄えない。人件費や設備修繕費が上昇しており、収益改善の余地は限られている。特に地方山間部の利用率は回復せず、輸送密度の低下が赤字構造を固定化している。
芸備線で最悪の採算状況が続く
最も厳しい区間は芸備線の東城―備後落合間で、100円の収入に対し9,945円の費用がかかる。営業係数は他の区間を大きく上回り、次いで姫新線の中国勝山―新見間が4,510円だった。赤字額が最大だったのは山陰線の出雲市―益田間の32億円で、紀勢線の新宮―白浜間が31億円、関西線の亀山―加茂間が18億円と続く。地方幹線でさえ深刻な収益悪化に直面している。
国・自治体との協議続くも出口見えず
芸備線では、国が設置した「再構築協議会」で存廃を含む議論が続いている。JR西、広島県、岡山県などが参加し、地域交通の将来像を模索中だ。
広島県関係者は「民営化の経緯を踏まえれば、JR西が地方線維持の責任を負うべきだ」と述べ、都市部の黒字路線による内部補助を求める立場を示した。しかし、経営の持続可能性には不透明感が残る。
地域実証事業で経済効果を検証へ
芸備線では、2024年7月から臨時列車運行や地域イベントを組み合わせた実証事業を実施している。当初は11月までの予定だったが、2026年3月まで延長され、経済波及効果を測定中だ。
これらの結果は今後の協議で重要な判断材料となるが、結論の時期は約1年半先とされ、地方路線の将来像はいまだ見通せない。
