赤根ICC所長への制裁で広がる国際的反発
米国のトランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らを制裁対象に加えたことを受け、国連や欧州から批判と懸念が相次いでいる。国連のステファン・ドゥジャリク報道官は19日の記者会見で、アントニオ・グテレス事務総長が今回の措置に重大な懸念を示していると説明した。ICCを国際刑事司法を支える重要な存在と位置付け、裁判所の役割を重視する姿勢を明確にした。
国連事務総長が示した国際刑事司法への懸念
国連側の反応は、個人への制裁にとどまらず、ICCが担う国際司法の機能そのものへの影響を意識したものとなった。ICCはオランダ・ハーグに本部を置き、国際的な刑事責任を扱う機関として活動している。グテレス事務総長の懸念表明を通じ、国連は外部からの圧力によって国際刑事司法の基盤が揺らぐことへの警戒感を示した形だ。
EU首脳らがICCの独立性と職員支持を強調
欧州連合(EU)でも支持表明が続いた。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長と、欧州理事会のアントニオ・コスタ常任議長は19日、ICCと赤根所長、職員を支持する共同声明を発表した。裁判官らが職務を遂行するには独立性が不可欠であり、外部からの圧力を受けるべきではないとの考えを打ち出した。
ドイツの法相も米国の対応を国際法への攻撃だとして批判し、オランダの外相はICCへの支援を継続すると表明した。ICCの所在地であるオランダを含め、欧州各国は制度の独立性を守る立場を前面に出している。米国の措置を巡り、欧州側の反発は個別の外交問題を超えて国際法秩序の在り方に関わる論点へ広がっている。EU首脳の声明は赤根氏個人への連帯だけでなく、ICC職員全体の職務環境を守る必要性にも言及する内容となった。
米国が同盟国にICC支援停止を求める姿勢
一方、米国務省は19日、赤根氏への制裁は日本政府を対象にしたものではないと説明した。その上で同盟国に対し、米国の主権を脅かしているとするICCへの支援を打ち切ることを期待すると表明した。米国はICCに加盟していないのに対し、日本は最大の資金拠出国であり、米側の要請は加盟国との関係にも影響する内容となっている。
ルビオ国務長官は7月からICCへの圧力を強め、加盟国に脱退を呼び掛けるとともに、当局者への制裁強化方針を示した。これを受け、ベネズエラとチャドは脱退を表明している。ICCを巡る米国の政策は、裁判所関係者への措置から加盟国への働き掛けへと範囲を広げている。日本は主要な資金拠出国であるため、米国の要請は日本を含む同盟国が今後どのような姿勢を取るかにも注目を集める。
国際司法と米国主権を巡る対立が一段と鮮明
トランプ政権は、ICCが米国の主権を侵害する恐れがあるとの立場を示し、制裁を強化している。これに対し国連やEU、欧州各国は、ICCの独立性と国際刑事司法の重要性を強調し、米国の対応に異議を唱えている。赤根所長への制裁を契機に、ICCの権限と米国主権、国際機関への外部圧力をどう捉えるかという対立軸が改めて浮き彫りになった。
