景況感改善の背景に米関税合意が判明
日本銀行の内田真一副総裁は2日、全国証券大会での講演で、9月に公表された企業短期経済観測調査(短観)について「全体として良好な水準」との認識を示した。背景には、日米間の関税交渉が合意に至り、先行きへの懸念が和らいだことがあると説明した。特に製造業の一部で改善傾向が見られ、企業収益は高水準を維持していると評価した。
物価上昇率の見通しに慎重姿勢を発表
内田氏は、物価基調の推移について「成長の鈍化などの影響で一時的に伸び悩む」との見方を示した。ただし、展望リポートで示された見通し期間の後半には、物価は2%水準で安定的に推移するとの認識を示した。これは日銀が掲げる物価安定目標に沿うものとされている。
金融政策運営は段階的な調整を強調
金融政策に関して内田氏は、経済や物価が想定通りに推移すれば「政策金利を引き上げ、緩和の度合いを調整していく」と明言した。今後の判断については、内外の経済や市場動向を踏まえ、予断を持たない姿勢で臨むと述べ、柔軟な対応を強調した。
市場では早期利上げ観測が拡大
9月の金融政策決定会合では、一部の政策委員が利上げを提案するなど、日銀内部でも議論が広がっている。これを受け市場では、10月29~30日の会合での利上げ実施への期待が高まっており、一時は70%近い確率まで織り込まれた。足元では63%程度にやや低下しているが、依然として強い関心が寄せられている。
国内政治情勢も政策判断に影響
内田氏の発言は、自民党総裁選を控えた政治情勢の中で行われた。次期首相の誕生を前に金融政策の柔軟性を残す意図もあるとされ、日銀は経済・物価の動向と同時に政治的要因も注視している。景況感が改善傾向にある中で、利上げのタイミングが大きな焦点となっている。
