米韓首脳が交渉妥結を発表
米国のトランプ大統領と韓国の李在明大統領は10月29日、韓国・慶州市で会談を行い、両国間の貿易協定で合意に達したと発表した。長期化していた自動車や半導体など主要産業分野での関税交渉が最終的に妥結し、両国は「貿易協力の新段階」に入ったと明言した。交渉前は双方とも慎重姿勢を崩さなかったが、首脳会談を通じて政治的合意に至ったことで、事実上の最終決着となった。
自動車関税の引き下げで競争条件が改善
今回の合意により、韓国車および自動車部品に対する米国の関税は従来の25%から15%に引き下げられる。日本車と同率となることで、韓国メーカーが抱えていた価格面での不利が解消される見通しだ。韓国は米国との自由貿易協定(FTA)に基づき長年関税ゼロで輸出していたが、前トランプ政権下で一時的に25%が課された経緯がある。今回の合意により、韓国自動車産業の輸出競争力は大幅に回復するとの期待が高まっている。
半導体・医薬品にも関税優遇措置を適用
合意には、半導体について韓国企業が台湾勢と同等の関税待遇を受けることも盛り込まれた。さらに、医薬品分野では最恵国待遇が適用され、他国より高い関税を課されることはない。農産物に関しては米国側の市場開放要求を韓国が拒否し、従来通りの保護措置が維持される。これにより、韓国の国内農業への影響を最小限に抑えつつ、工業製品を中心に輸出拡大を目指す構図が明確になった。
総額3500億ドルの投資で協定を補完
韓国は貿易協定の一環として、米国に総額3,500億ドル(約53兆円)の投資を実施する計画を提示した。このうち2,000億ドルを現金による直接投資、残り1,500億ドルを造船分野などの共同事業枠に充てる。直接投資の上限は年200億ドルと定められ、為替市場への急激な影響を避ける措置が取られた。韓国政府は分割投資と通貨スワップを併用し、ウォン相場の安定を確保するとしている。
市場の反応と経済への波及
合意発表を受け、韓国ウォンは対ドルで一時0.9%上昇し、円に対しても1%近く上昇した。自動車・半導体企業を中心に株価も堅調に推移し、現代自動車グループは「韓米同盟を経済面で強化する重要な節目」と評価した。専門家の間では、今回の協定が両国の貿易不均衡を緩和し、北東アジア経済の安定にも寄与するとの見方が出ている。
