事業拡大に向けた重点領域が判明
日本郵政は、収益力の底上げを目指し、不動産事業を次の成長軸として位置づけている。報道各社のインタビューに応じた根岸一行社長は、都市部に点在する郵便局の土地に新たな開発余地があると説明し、これらを積極的に活用して収益体質の強化を図る姿勢を示した。郵便・物流事業は今年度の営業損益が240億円の赤字見通しとされ、経営の立て直しが優先課題となっている。郵便需要が減る中で事業構造の見直しが迫られ、不動産分野が新たな柱として浮上した形だ。
都市部敷地の活用構想が判明
根岸社長は、都市部での住宅ニーズを踏まえ、分譲マンションの開発が新たな収益源になり得ると述べた。従来は賃貸ビルやホテルなどが中心だったが、より規模の大きい事業展開を視野に入れ、不動産ポートフォリオを拡充する考えを明らかにした。郵便局周辺の土地には転用可能なスペースが多く、局舎の集配業務などを他の拠点に振り分けることで開発用地の確保を図るとしている。この取り組みが実現すれば、複数の都市で郵政関連施設の再編が進む可能性がある。
営業利益目標と時間軸を発表
不動産事業の規模について、根岸社長は10〜15年で営業利益500億円規模を視野に入れると説明した。2025年3月期決算の同事業は139億円にとどまり、目標達成には大幅な拡張が求められる。オフィス賃貸のみでは十分な収益を得られないとして、分譲事業など高収益の案件を組み込む方針が示された。長期的な経営戦略の中で不動産が重要な位置づけを占めることが明確になり、グループの収益構造の変化が注目されている。
組織運営の課題改善策を発表
郵便局では、不適切点呼などの不祥事が相次ぎ、内部管理体制の強化が課題となっていた。根岸社長は、本社と地方拠点の人事交流が十分に機能していなかったと指摘し、ガバナンスの改善に向けた人事異動の活性化を進めると述べた。民営化以降、現場への統治が届きにくい構造が続いていたとして、その改善を組織改革に位置づける考えだ。この取り組みは、郵政グループ全体の業務品質向上につながるとみられ、関係部署で具体策が検討されている。
郵便・物流事業の体制見直しの影響
郵便分野の赤字は深刻だが、全国2万4000局の網を維持する方針は変えないとしている。コストの大部分を人件費が占めるため、営業時間の調整などで地域の赤字を抑えることが重要視されている。さらに、グループの人員約35万人については効率化の観点から縮小方向とされ、デジタル技術を用いた業務改革が検討されている。自治体業務の受託や遠隔医療サービスの導入など、郵便局の多機能化も進めることで、持続的な事業運営を目指す構えだ。
