省エネ性能を重視した新型AIチップが披露
TDKは北海道大学と共同で、アナログ回路を活用した低消費電力型のAIチップを開発した。一般的なAI半導体と異なり、センサーから得た信号をデジタル変換せず直接処理するため、従来比で10倍以上の効率を実現した。チップサイズは4ミリ角と小型で、ウェアラブル機器や小型ロボットへの搭載を可能とする。
人間の小脳を模倣した回路設計が判明
新チップは人の小脳の働きを模したアナログ演算方式を採用している。複雑な演算処理を必要とする従来型と比べ、少ない電力で瞬時に学習できる点が特徴だ。リアルタイムで動きを予測できることから、センサーを組み合わせることで新たな応用が期待される。
実証として公開されたじゃんけんシステム
発表会では、加速度センサーを用いた「じゃんけん必勝システム」が公開された。相手の動きを先読みし、勝つ手をリアルタイムで表示する仕組みである。通常のグー・チョキ・パーに加え、一部地域で使われる指の組み合わせも学習対象として追加された。
産業ロボットやウェアラブル機器への応用
TDKは新チップの用途として、産業用ロボットやウェアラブル端末を想定している。クラウドに依存せず、端末側で演算を行う「エッジAI」として動作できるため、異常検知や動作予測に活用できる。大量の電力を必要としない点も導入メリットとされる。
2028年の量産化を目指す方針を発表
同社は今後、さらなる性能検証を進め、2028年ごろから量産準備に入る計画を示した。電子部品で培ったアナログ技術を生かし、省電力AI半導体市場での競争力強化を狙う。今回の発表は、エッジAI分野の成長に向けた布石となるとみられる。
