万博向けEVバスの問題が経営計画に波及
大阪メトロが、2035年度をめどとしていたバス車両の全面的なEV化について、計画の実施時期を見直すことになった。大阪・関西万博の輸送用として導入したEVバスで多数の不具合が確認され、当初の運用構想を変更せざるを得なくなったためだ。脱炭素化を進める中期経営計画にも影響が及び、車両導入のあり方が改めて問われている。
同社は北九州市のEVモーターズ・ジャパンから190台を購入し、このうち150台を万博来場者の輸送に使った。しかし、実際の運行では機器や車体に関する問題が相次ぎ、その後の活用計画も大きく変更された。
運行期間中に832件の不具合を確認
万博期間中に確認された不具合は計832件に上った。内容にはブレーキホースの損傷や扉の開閉不良などが含まれ、継続的な運用に支障を及ぼす事例が生じていた。万博終了後には路線バスなどへ転用する案があったものの、この計画も取りやめとなった。
車両導入時に大阪メトロの社長を務めていた河井英明氏は、2026年7月に会長を辞任した。大量導入したEVバスを予定通り活用できなくなったことで、車両調達そのものだけでなく、その後の保管や処理も新たな課題となった。
100台超を移送し追加費用の負担発生
使用されなくなったEVバスは、一時、大阪メトロの森之宮検車場に100台以上が留め置かれていた。市民や大阪市議会から保管状況に厳しい意見が出たことを受け、2026年5月から富山県内のリサイクル施設への移送が進められた。市議会議員によると、移送に要した費用は約2700万円に達した。
さらに、移送後も毎月300万円を超える保管費用が発生している。大阪市議会との会議では、これらの費用を回収できなければ大阪メトロの経営を圧迫するとの指摘も出た。予定していた営業運行に使えない車両で追加支出が発生する状況となっている。
販売会社は民事再生中で回収見通せず
大阪メトロは、EVモーターズ・ジャパンに対し、車両の購入代金の返還に加え、移送費用や保管費用についても請求する方針を示している。一方、同社は現在、民事再生手続き中であり、大阪メトロ側も購入代金を全額取り戻せるかについて不透明な状況だとしている。請求を行う方針は明確になっているものの、実際にどこまで回収できるかは確定していない。
車両導入後に想定外の不具合が重なったことで、大阪メトロは費用面でも対応を迫られている。調達したEVバスを予定通り活用できなかった影響は、運行計画だけにとどまらず、保管や資金回収にも広がった。
全面EV化を先送りし導入方針を再検討
大阪メトロは脱炭素化に向け、2035年度ごろまでに保有するバスをEVへ切り替える方針を掲げてきた。しかし、万博向け車両で発生した一連の問題を受け、この計画は先送りされる。大量導入した車両で運用上の課題が表面化し、長期計画そのものを修正する結果となった。
万博輸送を目的に始まったEVバス導入は、その後の路線運用や全面EV化につなげる構想だった。現在は車両の処理と費用回収が課題として残り、大阪メトロは当初の計画を改めて検討する段階に入っている。
