世界が注目した「制御性T細胞」の発見
スウェーデン・カロリンスカ研究所は10月6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を大阪大学の坂口志文栄誉教授ら3人に授与すると発表した。坂口氏は、人間の免疫系が過剰反応を起こさないよう制御する「制御性T細胞(Treg)」の存在を突き止めた。自己免疫疾患を防ぐこの仕組みは、免疫学の新たな基盤として世界的に認知されている。
苦難の研究史、40年越しの評価
坂口氏は1980年代半ばから、免疫反応にブレーキをかける細胞の存在を確信していた。しかし当時の学界では受け入れられず、孤立した研究が続いた。1995年にその目印となる分子を発見、2001年に米研究者とともに重要な遺伝子を特定したことで、ようやく世界の評価を得た。長年の独自の探求が、今日の医療研究の礎を築いた形となった。
石破首相が祝意、がん治療への期待語る
同日夜、石破茂首相は坂口氏に電話をかけ、「世界に誇る立派な研究に感謝する」と祝意を伝えた。首相は会話の中で「がん治療は今後どう発展するのか」と質問。坂口氏は「免疫療法の効果はまだ20~30%だが、今後はどんながんでも免疫反応を高め治療できる時代が来る」と語り、科学の進歩が新たな希望を生むと強調した。
日本人の連続受賞、科学立国の存在感
今回の受賞は、前年に日本被団協が平和賞を受賞して以来、2年連続での日本人受賞となる。個人としては29人目、生理学・医学分野では2018年の本庶佑特別教授以来7年ぶり6人目の快挙だ。日本の基礎研究が国際社会で引き続き高く評価されていることを示した。
医療応用への道、次なる挑戦
制御性T細胞の研究は、がん免疫療法や臓器移植の拒絶反応抑制など、臨床応用の幅を広げている。坂口氏は会見で「免疫を調整することで病気の治療に直結する」と語り、さらなる発展を誓った。授賞式は12月10日にストックホルムで開催され、賞金1,100万スウェーデンクローナが3人に分配される予定だ。
