南米の同盟関係に深い亀裂
コロンビア政府が20日、駐米大使の召還を発表した。背景には、ドナルド・トランプ米大統領とグスタボ・ペトロ大統領の間で続く激しい応酬がある。トランプ氏は19日、コロンビアを「違法薬物のリーダー」と非難し、経済支援と補助金の打ち切りを明言した。長年続いた両国の安全保障協力は、急速に冷え込みを見せている。
トランプ政権、制裁と関税引き上げを警告
トランプ氏は同日、ソーシャルメディア上でペトロ政権を「麻薬生産を助長している」と批判し、同国への新たな関税措置を導入する意向を示した。米国防総省は17日にカリブ海で「麻薬運搬船」とされる船舶を爆撃し、3人が死亡したと発表した。ペトロ政権は「民間人が所有する船だった」と反論しており、証拠の提示を求めている。
外交的対立がエスカレート
コロンビア外務省は、ダニエル・ガルシア・ペーニャ駐米大使をボゴタに呼び戻し、事態の打開を協議中だと説明した。アルマンド・ベネデッティ内務相は「トランプ氏の発言は侵略行為の脅しに等しい」と強く非難。外交チャンネルを通じた抗議が続いているが、米側からの応答は限定的だ。
麻薬対策を巡る両国の認識差
米国はコロンビアを世界最大のコカイン生産国と位置づけ、長年にわたり年間数億ドル規模の支援を行ってきた。しかし、トランプ政権は「成果が乏しい」として対麻薬援助を全面停止。これに対しペトロ政権は「過剰な軍事介入が問題を悪化させた」と反論し、麻薬根絶政策の見直しを求めている。
軍事行動拡大の懸念
トランプ政権は8月以降、カリブ海沿岸で少なくとも7隻の船舶を攻撃し32人が死亡したと明かした。詳細は不明だが、ペトロ大統領は9月の国連総会で「米軍の行動は国際法違反だ」と訴えていた。両国関係の悪化は、南米地域全体の安全保障環境にも影響を与えかねないとの見方が強まっている。
