街宣活動を抑える目的で支払われた「解決料」が明らかになったが判明
同組合の設置した特別調査委員会の報告書によると、1990年代に当時の理事長側が、反社会的勢力と関係のある人物に数億円を支払っていたことが確認された。街宣車による組合敷地内への抗議活動を抑えるための「解決料」名目だったとされる。旧会長の説明では、理事長に就任した2004年から2016年までの間に、反社勢力への支払い総額はおおよそ10億円前後だったという。
このような支払いの背景には、組合敷地近辺での街宣活動に伴う「恐怖感」や抑止への思惑があったとされる。地域金融機関が反社会的勢力と接点を持っていた実態が、改めて浮き彫りになった。
2004年以降、暴力団関係者の紹介を通じた融資が約28.5億円に上ったが判明
報告書では、2018年に茨城県内の飲食店テナント購入資金として3億円の融資を行った他、反社リストに掲載されている暴力団幹部の紹介で、2019年~2024年にかけて9件で計約28.5億円の融資が実施されていたことも明らかとなった。これらの融資は「妥当性に疑いが残る」と特別調査委が指摘しており、融資審査としての適正性が担保されていなかった。
また、記録用のノートパソコンを旧経営陣が「ごみ袋に入れて可燃ごみとして廃棄した」と説明しており、重要記録の消滅を図っていた可能性も浮上している。
別報告では不正融資総額が約279億円と算定されたが発表
別の第三者委員会の報告によれば、同組合が2004年以降に実行した不正融資の総額は前年査定の247億円を超え、279億8400万円に達した。これにより、地域金融機関としては異例の巨額不祥事となった。報告書では、1293件にわたる不正融資の実行が確認され、うち無断で名義を用いた融資が1239件、229億円超を占めていた。
こうした実態は、金融機関のガバナンスや監査機能が機能していなかったことを示すもので、監督当局も「経営管理態勢・法令遵守態勢に重大な問題」があったと指摘している。
組合側が総代会で謝罪・再発防止を表明したが組合員らの反応は冷ややか
同組合は、いわき市内で総代会を開催。理事長の 金成茂 氏が「さらに新たな不祥事の存在が判明した」と陳謝し、「すべてのうみを出し尽くし、マイナスからの再出発となる状況だが、新たないわ信に向けて役職員全員で取り組み、行動してまいる」と述べている。
しかし、長年取引を重ねてきた組合員からは「もう信用できない」といった厳しい言葉が寄せられた。ある運送業者の70代男性は、「また不祥事を起こしたら終わりだ」と警戒感を強めている。こうした声から、地域社会における同組合の信頼回復には長期を要するとの見方が強まっている。
長期化・隠蔽の構図が浮かび上がり、地域金融への信頼を揺るがす影響
複数の報告書からは、不正が2000年代初期から20年近くにもわたって継続していた構図が明らかとなっており、記録の破棄や虚偽説明といった隠蔽行為も指摘されている。金融庁や地域金融機関の監督責任が今後問われる局面にある。
地域の中小企業や住民が利用してきた信用組合がこのような事案に直面したことで、地域金融そのものの信頼性が揺らいでおり、再発防止と透明性の確保が急務となっている。
