2026年産米生産量を711万トンに設定した事情が明らかに
農林水産省は10月31日、2026年産主食用米の生産見通しを711万トンと決定した。これは25年産見通しの748万トンと比較して約5%の減少を示しており、需給のバランス調整を目的とした方向転換である。
需要見通しを694万~711万トンと算定し、最大値に合わせて生産枠を設定したことで、供給過剰による価格低迷に対する備えがうかがえる。
また、産地の作付け計画の目安ともなるこの数値は、生産者の収益性を見据えた出荷制御の意図を含んでいる。
増産方針からの変更で前政権との方針乖離が浮上
かつて増産を支持していた前政権の方針から、今回の生産見通しでは実質的に「増産撤回」と捉えられている。生産量の急増が米価の下落を招くとの生産者の懸念が背景にあり、政府がこれに配慮して減産を決断した。
備蓄用米の買い入れを再開する方針も、主食用米の生産削減に影響を与える要因として注目されている。
このような政策転換は、国内米価の維持と生産者保護を優先する姿勢の表れといえる。
米価高止まりと輸入米動向が市場に影響を与えている
10月20〜26日のスーパー約1000店舗調査による5キログラム当たりの平均販売価格は4,208円となり、前週比で43円下落したものの、依然として4,000円台を維持している。
この高値水準は、消費者の負担増および国内米離れの可能性を指摘されており、安価な輸入米の増加とも連動している。
価格が高止まりする構図が長期化する場合、国内農業と消費市場の双方にとって構造的な課題となる。
生産者・政府双方の視点から見える今後の方針
鈴木農水大臣は「大幅増産は需給安定を損なう」と明言しており、中長期的には海外展開も視野に「増産トレンドを作りたい」としている。
一方で、生産者側には「現状から大きく変わらない」との見方も示されており、今回の見通しが実質的には現状維持的な水準であることがうかがえる。
このように、生産体制の調整と将来戦略の両輪が政府の米政策において鍵を握る。
将来の需給管理と消費者対策が政策課題にのぼる
国内米の需給バランスを維持するためには、備蓄米の活用、消費促進策、価格安定化対策が不可欠である。政府は「おこめ券」など消費支援にも言及しており、消費者の購買力低下を念頭に置いた対応を検討している。
ただし、国内産米価格の高止まりが続くと、消費者離れや輸入米依存となる構図が生じる可能性もある。
今後は、生産者への配慮と消費者への配慮を両立させる需給・価格政策がより重要な課題となる。
