被告が遺族への姿勢を語った経緯
奈良地裁で12月4日に実施された裁判員裁判第14回公判では、安倍晋三元首相銃撃事件の被告である山上徹也被告が、被告人質問の中で初めて遺族への謝罪を口にした。これまでの公判では遺族への直接的な言及がなかったが、この日は「非常に申し訳ない」と述べ、自身の行為が遺族に深い痛みを与えた事実を認めた。法廷では、謝罪の言葉に至る経緯や心境が改めて問われ、被告は落ち着いた口調で回答した。
標的変更に関する認識の変化
公判では、旧統一教会の教団幹部から安倍氏へ標的を移した理由が改めて取り上げられた。被告はその判断について「間違いだった」と述べ、強い影響力を持つ人物を襲撃した重大性に触れた。事件後、模倣的な行為や陰謀論が広がったことについても「自分の行動が原因を生んだ」と語り、社会的影響の大きさを自ら認識する姿勢が示された。この点は、過去の公判で語られた内容と比べても踏み込んだ表現となった。
遺族への認識とこれまでの言及の違い
弁護側の問いかけに対し、被告は「安倍氏の家族に恨みはない」と述べた。遺族が経験した長期間の苦しみに触れ、自身も突然の死別を体験したことがあると説明した。この言及は、11月の初回質問で示された謝罪とは異なり、遺族への具体的な理解を示すものとなった。そのため、今回の公判は被告の姿勢が変化した場面として注目された。
宗教団体を巡る反響への言及
事件を契機に旧統一教会に対する解散命令が出され、宗教2世問題にも関心が集中したことについて、被告は「予測していなかった」と語った。一方で、こうした社会的動きが広がった点について「社会にとって望ましい方向だ」と述べた。被告が自身の行為が宗教を巡る議論に影響を及ぼした点をどう捉えているかが示されたかたちだ。
昭恵氏の出席状況と公判の焦点
前日の公判には、被害者参加制度を用いて昭恵氏が初めて出席した。しかしこの日は法廷に姿を見せず、傍聴席の雰囲気も前日とは異なっていた。被告人質問は今回で5回目となり、裁判は被告の動機や認識の変化を中心に進行している。今後は、供述が量刑判断にどう影響するかが注目点となる。
